光墨祥吾 山本逸生
36人が死亡した2019年の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判は、検察側による遺族らの被害感情の立証が行われている。検察官が供述調書を読み上げ、失った家族への思いや青葉被告に対する処罰感情を示すほか、自ら法廷に立って意見陳述する遺族もいる。
29日の公判では、栗木亜美さん(当時30)の母親が意見陳述した。淡々とした様子だったが、「娘を返してと、叫びたい気持ちでいっぱいです」と述べた時は語気を強めた。傍聴席からは、すすり泣く声が漏れた。
事件が起き、娘の安否がわからなかった1週間について、母親は「記憶がない」と振り返った。一方、亡くなった娘との対面は鮮明に覚えているといい、「ひつぎに横たわる娘の口元が苦しそうにゆがんでいた」と話した。「怖かったよね、苦しかったよね、ごめんねとたくさん話しかけた」
供述調書によると、母親は娘と別れたくない思いから「さようなら」ではなく、「またね」と声をかけ、時間が許す限り一緒にいたという。
事件後は娘との思い出を力に、「この4年間を生きてきた」と話した。そして、「もし自分の家族が……」と述べると、しばらく言葉が出ず、「人の手によって奪われたら、許すことができますか?」と続けた。
青葉被告に対しては、時間が経つにつれて、憎しみや恨みが深まっていったという。被告人質問の言動から「心からの謝罪は不可能と理解した」と述べた。「ならば、せめて、36人が苦しみ、恐怖や絶望を同じように味わってほしい。極刑を望みます」と訴えた。
裁判で青葉被告の半生が明らかにされたことに対し、「今日まで青葉被告を生かしてくれた医療関係者に感謝しています。直接本人を見て、命を奪われた経緯を知ることができた」と話した。(光墨祥吾、山本逸生)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル